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2005年1月下旬に、下記の質問状を沖縄県に提出いたしました。
なお、回答が届きましたら、またご報告いたします。→2005年4月に回答が届きました。

新石垣空港整備事業に係る環境影響評価準備書に記載されている
コウモリ類への環境影響評価予測とその保全措置についての質問状



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                         平成17年1月21日

 沖縄県知事
 稲嶺惠一 様
                            コウモリの会
                            会長 山本輝正

 新石垣空港整備事業に係る環境影響評価準備書に記載されているコウモリ類への環
境影響評価予測とその保全措置についての質問状

 新石垣空港整備事業に係る環境影響評価準備書について、環境の保全の見地から次
の件について、回答を求めます。

1.コウモリ類の出産哺育こそ確認されていないものの、冬季には多数のヤエヤマコ
キクガシラコウモリが利用するB、C、E洞が、今回の事業により消失しても、大きな
影響はないとする根拠は何ですか?

2.A 、D洞が保全されることが「島全体の個体群」に影響が少ないとする根拠になっ
ているが、洞口が事業予定区域からわずかにはずれるだけで(しかもこれまでに公開
された資料から判断すると、地下の主洞は事業区域内へ延びており、A洞におけるコ
キクの産室はドレーン層の直下にあたると考えられます)、両洞穴の環境がこれまで
どおり健全に維持されると考える根拠は何ですか?

3.「環境影響評価準備書」に記載されていた環境保全対策は具体性に欠けるもので
した。また、現在作成されている「環境影響評価書」に、意見に対する回答が掲載さ
れているとしても、その回答について検討する場は設けられておらず、結果として事
業主の提案した環境影響評価とその保全対策が適切でない場合でも、国民がそれを訴
える場がありません。
 これでは、影響があると判断された際の事業の見直しなども含めた適正な環境保全
措置を行うための、事業者と国民の合意が得られるとは思えません。
 以上の理由から、最低限、具体的な下記項目についての見解を現段階で確認してお
く必要があると考えますので、下記項目についても回答をお願いします。

 a・保全目標個体数は、何頭ですか? 種別に回答してください
 b・事業スケジュールに合わせた保全目標を示してください 
 c・保全目標の達成をモニタリングするための調査計画を示してください
 d・調査はどのような組織、メンバーが行いますか 
 e・保全目標の達成を評価する必要がありますが、達成基準を示して下さい 
 f・評価組織はどのようなメンバーで構成されますか 
 g・評価結果は公表されますか。公表される場合、それはいつですか 
h・保全目標の達成に危惧が生じた場合、保全計画の見直しが必要になりますが、
  速やかな対応ができますか
 i・保全目標の達成が困難と判断された場合には、誰がどのような対応をとります
か 
 j・保全計画の中で、積極的にコウモリ類の生息環境を向上させる考えはあります
か 

 以上につきまして、「調査結果をもとに総合的に判断した」というような抽象的な
回答ではなく、判断の具体的な根拠をお示しください。
 本会ではこれまでにも、意見書を提出してきましたが、ご回答を得られないので、
今回は2月14日(月)までに必ず回答くださいますようお願いします。

           コウモリの会事務局
           249-0001 神奈川県逗子市久木8-20-3
                 TEL,FAX 046-873-3677

●2005年4月に回答文書が届きました。
                            土石第10915号
                             平成17年3月31日

コウモリの会
 会長 山本輝正

                          沖縄県土木建築部
                                                    新石垣空港建設対策室
                                                    室長 譜久島 哲三

 新石垣空港整備事業に係る環境影響評価準備書に記載されているコウモリ類への環
境影響評価予測とその保全措置についての質問状について


 平成17年1月21日付けで提出された標記の件について、別紙の通り回答いたし
ます。




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 新石垣空港整備事業に係る環境影響評価準備書に記載されているコウモリ類への環
境影響評価予測とその保全措置についての質問状(回答)


   1.コウモリ類の出産哺育こそ確認されていないものの、冬季には多数のヤエヤ
    マコキクガシラコウモリが利用するB、C、E洞が、今回の事業により消失して
    も、大きな影響はないとする根拠は何ですか?


 (回答)小型コウモリ類に関しては平成13年度から調査を行っております。建設
予定地を含む石垣島の75の人工洞窟、自然洞窟を調査しており、ヤエヤマコキクガ
シラコウモリ(以下コキクと言う。)は、38箇所の洞窟で利用を確認しております。
 また、集団遺伝学的分析の結果から、コキクは石垣島全体で一つの個体群を形成し
ていることが考えられることから、予定地内の洞窟と他洞窟間との遺伝子交流が行わ
れていることが考えられる。
 標識調査の結果から、「A、CとあるいはE洞窟間の移動や他の洞窟との間を移動
している事例が確認されていることから、B、C、E洞が消失してもA洞窟やD洞窟
を含めた他の洞窟を利用するものと考えられる。(D洞窟では、コキクの標識装着作
業は行っていないが、コキクの生息が確認されていることから、A洞窟と同様に移動
先として考えられる。)
 C、E洞に生息するコキクは石垣島全体の数%程度である。
 移動が確認された洞窟周辺は、於茂登岳を中心とした樹林帯に広がっており条件の
よい場所である。
 これらのことから、B、C、E洞が消失しても、まず、A、D洞を含む他洞窟へ移
動するものと考えられる。移動先と考えられるねぐら及び餌場は環境収容力の範囲内
と考えられ、移動先の個体数が増加しても長期的な影響は少ないと考えています。


   2.A 、D洞が保全されることが「島全体の個体群」に影響が少ないとする根拠
    になっているが、洞口が事業予定区域からわずかにはずれるだけで(しかもこ
    れまでに公開された資料から判断すると、地下の主洞は事業区域内へ延びてお
    り、A洞におけるコキクの産室はドレーン層の直下にあたると考えられます)
    、両洞穴の環境がこれまでどおり健全に維持されると考える根拠は何ですか?


 (回答)A洞窟の洞口は滑走路中心から約450m離れた位置にありますが、最奥
部は、着陸帯端部の盛土箇所の直下約5mの深さに位置し、ドレーン層は最奥部より
更に海側によった着陸帯内部に設置されます。A洞窟はドレン層より上流側に位置し
ておりドレン層からの雨水浸透によりA洞窟最奥部が水没することはありません。ま
た、両洞窟周辺の樹林帯は現状のまま残存します。
 従って、洞内環境は現状の通り維持されるものと考えています。


   3.「環境影響評価準備書」に記載されていた環境保全対策は具体性に欠けるも
    のでした。また、現在作成されている「環境影響評価書」に、意見に対する
    回答が掲載されているとしても、その回答について検討する場は設けられてお
    らず、結果として事業主の提案した環境影響評価とその保全対策が適切でない
    場合でも、国民がそれを訴える場がありません。これでは、影響があると判断
    された際の事業の見直しなども含めた適正な環境保全措置を行うための、事業
    者と国民の合意が得られるとは思えません。以上の理由から、最低限、具体的
    な下記事項についての見解を現段階で確認しておく必要があると考えますので
    、下記事項についても回答をお願いします。
       a・保全目標個体頭は何個体ですか? 種別に回答してください
     b・事業スケジュールに合わせた保全目標を示してください
     c・保全目標の達成をモニタリングするための調査計画を示してください
     d・調査はどのような組織、メンバーが行いますか
     e・保全目標の達成を評価する必要がありますが、達成基準を示して下さい
     f・評価組織はどのようなメンバーで構成されますか
     g・評価結果は公表されますか。公表される場合、それはいつですか
     h・保全目標の達成に危惧が生じた場合、保全計画の見直しが必要になりま
       すが、速やかな対応ができますか
     i・保全目標の達成が困難と判断された場合には、誰がどのような対応をと
       りますか
     j・保全計画の中で、積極的にコウモリ類の生息環境を向上させる考えは
      ありますか


 (回答)
a.事業実施区域周辺の洞窟を利用している小型コウモリ類は、変動幅があり、具体
的に保全目標個体数を示すことは困難です。石垣島全体で総合的に判断すること
を考えています。

b.事業実施に合わせて早い時期に保全措置を実施していきたいと考えています。

c.具体的には、「新石垣空港整備事業に係る小型コウモリ類検討委員会」に図り
、指導・助言を得て実施していく予定です。

d.現在の所、NPO法人東洋蝙蝠研究所が調査を行っており、今後も調査をお願い
たいと考えています。

e.石垣島全体で総合的に判断することを考えております。具体的には、「新石垣空
港整備事業に係る小型コウモリ類検討委員会」に図り、指導・助言を得て実施し
ていく考えです。

f.評価組織は、事後調査委員会(仮称)を考えており、現在の環境検討委員会及び
小型コウモリ類検討委員会のメンバーを考えております。

   新石垣空港検討委員会(メンバー)

委員長  香村 真徳   琉球大学名誉教授           海藻生態学
副委員長  大森  保   琉球大学理学部教授       地球化学
          渡嘉敷義浩      琉球大学農学部教授            土壌学
          黒田登美雄     琉球大学農学部教授            地質学
     立石 庸一   琉球大学教育学部教授      植物生態地理学
     太田 英利    琉球大学熱帯生物圏            陸上動物学
                          研究センター教授
     酒井 一彦   琉球大学熱帯生物圏            サンゴ生態学
                          研究センター助教授
     金城 政勝   琉球大学熱帯生物圏            昆虫学
                          研究センター助教授
     仲座 栄三   琉球大学工学部助教授          海岸工学
          上村 真仁   (財)世界自然保護基金ジャパン  NGO
                          サンゴ礁保護研究センター職員
          崎山 陽一郎    (財)日本野鳥の会              NGO
                          八重山支部代表
          前田喜四雄      奈良教育大学
                          自然環境教育センター教授        哺乳動物学

 新石垣空港整備事業に係る小型コウモリ類検討委員会(メンバー)

委員長  東 清二        琉球大学名誉教授                昆虫学
          中村 久        秋吉台科学博物館 前館長        洞窟性動物
          前田喜四雄      奈良教育大学教授                哺乳動物学
     松島昭司    石垣市教育委員会                地元洞窟について
          向山 満        NPO法人コウモリの保護を        小型コウモリ類
                          考える会 代表

g.事後調査の結果は、報告書をとりまとめ、沖縄県本庁舎、八重山支庁、石垣市役
所等において公表することを考えています。

h.i.j.事後調査委員会(仮称)を設置する予定であり、専門の立場からの指導
・助言を受けて、環境影響の回避・低減措置の強化や改善を図る考えです。


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